隣の珈琲屋さん

2012年に鹿児島市内のレトロフトという古ビルに入居し、イラストレーション主体のデザイン事務所をはじめたペケペケです。

その頃の私達は26歳で自営業の何たるかも知らず、客も来ず、毎日アトリエにやって来ては壁を塗り替えたり古書店や、珈琲店の店主と長話をしていました。
とてもとても長い時間の中で、確定申告や小商いのあれこれを古書店主から、珈琲や食い道楽の何たるかを珈琲屋店主から教えてもらいました。今となっては、あの頃の暇で暇で苦しかった時間が大切な宝物だったと思えてなりません。


その珈琲屋店主ミツタさんが他界されたのはつい先日の事でした。


ミツタさんは、開業したてで何の実績も無い私達に店のDMや看板を全て任せてくれました。ミツタさんというキャラクターの魅力を様々なツールに落としこんでいく作業はとてもやり甲斐があり、その後の幾つもの仕事に繋がっていきました。


そんなミツタさんは、レトロフトの店子で最高齢。サラリーマンをしながら珈琲について学び63歳で珈琲店を開業。リーズナブルで美味しい直火焙煎珈琲やランチを提供。常連さん達が足繁く通う人気店になりました。
店子最高齢でありながら、一番のお祭り好きで毎年この時期に開催するレトロフト周年祭を誰よりも楽しみ、満喫していたミツタさん。
今回の8周年祭で出す特別メニューや珈琲教室の打ち合わせをしていた矢先の事だったので、今でもあまり実感が湧いていません。
ミツタさんが教えてくれたこと、一緒に悩んだり楽しんだりしたこと、レトロフトに入ってミツタさんに出会えて本当によかった。


34歳になる私達は今でも若ゾー丸出しですが、この先、少しだけ大人になった自分と出会える様な気がしています。


自分が一番楽しんで、ワクワクして、その先にお客さんの喜ぶ顔が見たい。
ミツタさんの商いの形は今私達が一番必要としているものなのかも知れません。
いつでも飽くなき探究心を忘れずにミツタさんの様に素敵なシニアを目指していきたいです。ちなみに、ミツタさんが作ってくれた居心地の良い珈琲店は、そのポリシーを受け継ぎながら次の方にバトンタッチされていくそうですよ。

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